数土 「そこで僕と椎名ゆかりさん(北米マンガ事情に詳しい翻訳者・出版エージェント)がよく出すのが“アニメスタイル”“マンガスタイル”という言葉なんです。いまアメリカやヨーロッパの会社が“いかにも日本で作ったような作品”をどんどん制作しています。たとえば『アバター 伝説の少年アン』などがそうです。
海外のアニメ賞を多数受賞した『アバター 伝説の少年アン』は2Dのアニメーションで、動きやキャラクターは日本的です。世界観もアジアンテイストになっています。明らかに日本のアニメを研究していて、市場にも受け入れられている。そして、玩具と連動させる日本の十八番をそのまま取り入れています。
また、フランスのマラソン社は日本アニメと見まごうクオリティの作品を生み出しています。それだけじゃありません。ドバイやエジプトに行っても、『こんなもの作ったから見てくれよ』と言われる。各国で“日本アニメスタイル”の作品が次々と生まれているんです。
これらの作品は、日本のアニメファンやクリエイターからすると見劣りがします。『あれはまがい物だ。デッサンも狂っている』という批判すら出る。しかし、よくよく見ると、技術が至らないからではないのです。海外のクリエイターは自分たち、そして自国の消費者に合わせて描いているんですね。
そうやって出てきた日本アニメ風(日本アニメスタイル)の作品と、オリジナルの日本アニメを並べてみたときに、どちらが好きですかと現地で聞けば――消費者は前者を選び、結果としてビジネスも成功するんです。それがいま世界各国で起こっている現実です」
―― アメリカ人にとってはカリフォルニアロールこそが自分たちの口に合う寿司だという話と同じですね。それによく考えてみれば、日本人だってカレーは大好きですが、インドのオリジナルレシピを尊重しているかといえば……。
数土 「そう! そんな感じですよ(笑)」
”- ASCII.jp:日本アニメは世界各国で負け始めている|まつもとあつしの「メディア維新を行く」 (via katoyuu)