石井:
一方で、2009年に神山監督が手がけた「東のエデン」は完全オリジナルですが、お客様の支持と出資側の意見とのバランスはどうやって取ったんですか?
神山:
東のエデンは攻殻機動隊とまったく逆で、オリジナル作品を作ってほしいというリクエストだったんです。攻殻機動隊のころのような圧力はなくて、むしろ好きにやって欲しいというオーダーなんですが、ここにも落とし穴があって、だからといって好きにやると怒られるんです(笑)好きにやると「そういうのはテレビ向きじゃない」とかいうことになって、かえって攻殻機動隊より制限が多かったですね。
どういうオーダーが来たかというと、「攻殻機動隊からミリタリー要素をのぞいて、女性にウケるような味つけをした上でエヴァ要素を注入し、『24』を入れたエンターテインメント作品」というもので(笑)正直ムチャクチャだなあと(笑)
しかも、先方は「攻殻機動隊を作ったあなただから頼んでいるんです」と力説するわけなんですが、いや、それってオレのこと嫌いってことだろうと(笑)
テレビのプロデューサーと話していくなかで見えてきたんですが、「ミリタリー要素の排除」という要求は攻殻機動隊を全否定しているように聞こえるのですが、実はOLさんがテレビを見ている時に一番チャンネルを変えやすい要素がミリタリーなんです。普通の刑事ドラマでも、ピストルを出した瞬間にチャンネルを変えてしまうという、統計上の数字が出ているというんですね。なので、可能ならミリタリー要素を抜いて欲しいと。
そこでこちらも「タチコマは人気がありましたよ」と言うと、「タチコマは戦車じゃないんで。むしろペットロボットはどんどん出して下さい」と言われてしまったんです。
その後、「OLさんも大好きな携帯だったらどうですか?」と提案すると、「携帯はみんな大好きです、24時間いじっていますからね。では、携帯を主人公にしてください」ということになったわけです。
あと、ちょっと言い方は悪いですが、原作つきの「萌えアニメ」であれば数万人のファンがついてくるはずだという保証がある上でアニメ化されるわけですが、オリジナルはそういう相手と勝負して行かなくてはならないんです。攻殻機動隊的な物をオリジナルで作っていくという企画が通らない理由はそこにあります。
”- 攻殻機動隊からミリ要素を抜いてエヴァと24を入れ女性向けにすると「東のエデン」に?神山健治、オリジナルの難しさを語る - GIGAZINE (via katoyuu)