“
ところで、そもそもHIVをやっつけるのが難しい理由は、HIVが、ある種の免疫細胞を隠れ家にして、そこで冬眠しちゃうからなんですね。隠れ家に入り込まれてしまうと、もう手も足も出ない。ウイルスをやっつける薬を患者の体に送り込んでも、HIVには届かない。
とくに、メモリーT細胞と呼ばれる「隠れ家」はとても寿命が長いため、いつまでもいつまでも、HIVを匿ってしまいます。何年、何十年と治療を続け、もう血液中にHIVがいなくなったかな? と思っても、いつ何時、HIVが目覚め、激しく増殖して、元の木阿弥になってしまうか分からないのです。
しかし(ここが重要なところなのですが)、免疫細胞に関係して、ある種の遺伝子変異を持つ人は、HIVが「隠れ家」に入りために必要な「鍵」を作れないのだそうです。「鍵」がなければ、HIVは「隠れ家」に入れず、もろに攻撃を受けて、いずれ追い出されてしまう。
「ベルリン患者」は、一度の骨髄移植では、白血病を叩くことができませんでした。それは命にかかわる深刻な危機です。結局、彼は骨髄移植というリスクの高い治療を二度受けることになります。そして二度とも、HIVが必要とする「鍵」を持たない特殊なドナーから骨髄をもらうことができました。その過酷な治療を生き延びた「ベルリン患者」は、なんと、完治したと判断されるに至ります。
こうして彼は、1981年にこの病気が報告されて以来初めて、「完治」した患者となったのです。
たった一例でも、これは画期的なケースです。当然ながら、リスクの高い過酷な治療を、そのまま普通のHIV感染者に施するわけにはいきません。しかし突破口が開かれれたことの意味は大きく、研究者たちは、あの手この手で、その道を広げていこうとしているとのこと。
”
-
エイズ治療研究の最前線--『完治』への道 - HONZ (via yellowblog)